『梨泰院クラス』は復讐と恋愛の糸が絡むソシオパス社会適応成長記とニーチェの「超人」のドラマ化だ❗

この記事は「ストーリーの根幹に関わるネタバレはなし」でお送りします。

 

皆様、こんばんは。

いやぁ、韓国ドラマ『梨泰院クラス』(イテウォンクラス)見終わりました。
面白かったです❗

f:id:osenseitoosaitousama:20200808190428j:plain

梨泰院クラスの人々

本当にあっという間でした。
思ったよりアットホームな展開で、間延びするところもあったけど、見終わった今は、満足度大❗です😄
で、最後まで見て、やはりそう言うことが言いたかったんだなーと、このドラマが主張する哲学にハッとした所もあったので、ドラマを視聴するアシスト的な記事が書ければなー、と思いましたので、僭越ながら、以下に記したい思います☺

まずは前回も載せたあらすじから。

周りから見ると少し変わった性格の主人公セロイは高校の転校を機に、たった数日間で、退学させられ、父を亡くし、前科者になり、警察官への夢を奪われる、と言うすべてを失った天涯孤独の身となる。
そこから約10年経ち、セロイがソウルの飲食店激戦区である梨泰院(イテウォン)に念願の出店を果たし、父の命を奪い自分をどん底に陥れた外食チェーントップ、長家(チャンガ)グループの会長と息子のすべてを奪うべく仲間たちと復讐を始める!
(あらすじ作成 byお先生)

 

f:id:osenseitoosaitousama:20200808131156p:plain

画像はOnlyOneOfの『savanna』のMVから

 

『弱肉強食』……。

これは唐の文人、韓愈(カンユ) が旅立つ僧侶、文暢 (ブンチョウ) に贈った詩『送浮屠文暢師序』の中にある一文、「弱之肉、彊之食」からくる言葉である。
「鳥は餌を啄んでは周りを見回し、獣は山奥から滅多に出て来ずたまに出てきて食物を探す。
自分が他のものに害されるのを懼れるからである。しかし、この害を免れることは決して出来ない。
鳥獣の世は、弱きものの肉は強きものの食物だからである。
儒教によって統制がとれた人の世に暮らす私は、鳥獣とは異なり、安らかに暮しのんびりと食べ、揺ったりと呑気に生き死にする。」
(要約 byお先生)

『焼肉定食』🍴と同じくらい有名なこの四文字熟語の本来の意味はこの様なものである。

しかし、そんな儒教の国、韓国を舞台に小さな屋台から一代で外食産業のトップに立った『長家』(チャンガ)グループの会長の理念がこの『弱肉強食』なのである。

しきりにこの教えを説くこの会長は、なぜ人でありながら、人の世を降りて鳥獣と同じ場に進んで立とうするのか。
貧しい国に立ち向かい、人間固有の「外食」と言う食文化の仕組みを庶民に与えた人であると言うのに。

主人公セロイの敵である会長はそんな人なんです。

自分以外の他者は醜く価値のない奴隷や家畜と見ているので、そもそも食物連鎖の狩猟的な意味は失っているんですけどね💧
自分の店で出す家畜=醜いもの 、てのも変😞
この理念が本当に曲がっていて凄い❗

そんな教えを無理矢理、押し付けられているうちに曲がりに曲がってぐねんぐねんな根性になってしまったのが会長の長男です。

f:id:osenseitoosaitousama:20200808190433j:plain

長家グループの人々

主人公セロイと二人の敵の間には簡単には覆せない程の差があり、倒すためには命を奪うなど危険な手段でない限りちょっと難しいくらいに金銭的、社会的地位の差があるのです。
でもセロイの性格(父の教え)から見てその手段は決してないので、実は、出所して遠洋漁業でお金を稼ぐところから始まる15年がかり❗❗の壮大な復讐劇なのです😱

このドラマ、私は見ていて同じ韓国ドラマ『スリングショット』を思い出しました。
特に説明しませんが、あれもパート2を作ってもいいくらい簡単には終わらない社会的地位の差があった二人の攻防戦だったのに、パク・ヨンハが亡くなってしまったので本当に残念。でも凄く内容の濃い良いドラマだったので是非見て欲しい作品です!

私が最近見た復讐もの『無法弁護士』(主人公が弁護士)、『バベル』(記者から検事、敵の財閥の法務弁護士へと出世)に比べるとスタートから敵との差が大分あり、また『スリングショット』や『無法弁護士』の復讐相手は毎度、徹底的に息の根を止めにやってくるんですが(時には 殺人もあり😫)、それは敵がサイコパスだったから。

今回の会長や息子の役はサイコパスや快楽殺人者とはちょっと違います。
産業界の会長として理念はあるんだけど、自分に逆らう子供(セロイ)を土下座させれば済むと思っている人間なのです。

そんな会長を演じるのが私が『秘密の森』を見て惚れたユ・ジェミョン。
この会長、分析好きの私が見てもほんと掴めない性格だったのですが、考えてみたら私が見たユ・ジェミョンが演じた役(『秘密の森』や『ライフ』とか)って、どれも最初は掴めないタイプでした。
後半は彼の哲学が伝わって来たけれど、非道な財閥会長をよく演じているイ・ギョンヨンの分かりやすさに比べると、要は敢えてそう言う演技構成なのだなぁ、と思いました。
実は47歳(❗)の彼が演じるチャン・デヒ。そんな所もある意味、見所かも知れません。

そして、このドラマ、母親がまったく出てこない!
セロイには母親は最初からいない、セロイが思いを寄せるスアは母親が孤児院に預けたまま失踪。刑事には妻がいない、会長の長男にも母はいなかったし、次男の母(会長の愛人)はアメリカに行っちゃった。セロイの店の従業員は両親の存在が皆無。ソシオパスのイソだけ母親がいて父親がいないのです。
これは父と子のドラマと言うのを分かりやすくするためなのか?
とにかくセロイの父と会長との生き方、考え方の違いが凄い!
ちなみに、会長の長男の唯一、人間らしい所は申し訳なさ程度の父性を求める心。
毎度思うけど、財閥の息子たちが皆おかしいのは完全に親の育て方の所為なので早く気がついて、会長たち😫
登場する二人の父の息子に対する家訓の差がこの物語の核なのです。

 

さて、見る人に「おっ!」と思わせる魅力的な女性、イソ(IQ162のソシオパスの女子高生で、やがてその頭脳を活かしてセロイの店のマネージャーになる。)は殴ったり殴られたりのシーンが複数回あるのですが、調べてみるとソシオパスの特徴でもあるらしい。
IQが高いなら頭脳を駆使して殴られない方法をとれば良いのに、それが出来ないのがソシオパスの魅力の裏に潜む闇なのでしょうか。

そんな彼女が変わっていくのもこのドラマの見所です❗
途中からイソが主役では?ってくらい比重が大きくなってきましたが、彼女の表情の変化、好きな人に対する態度や生きていくことを自分なりに学び社会へ適応していく過程が成長記として大変楽しめます!

イソがドラマの最初から思い悩むのが『なぜ人は生きるのか』『どうやって生きていけば良いか』と言う問。
これ、単に厨二病じゃないですからね😅
IQ162が考える問なのです。

ドラマの最後の方でニーチェの『ツァラトゥストラかく語り』が出てきて、あぁやっぱりねぇ、って感じだったんですが、彼女は人生に対するこの問の答えを、物語の最初からニーチェを読みながらセロイの生き方を一番近くで見て、ずっと考えているのです。

あるとき、イソが同じ様な質問をセロイにしてみるのですが、その時のセロイの答えが面白かった。是非ドラマで確認して欲しいです😄

f:id:osenseitoosaitousama:20200808200610j:plain

お先生所有のマニアなニーチェ

苛酷な人生、そもそもただ生きていくこと自体に耐えられない人でも宗教的な価値観に解決策を求める時がありますよね。
と言うか、我々が生れた時点でこの世の価値観はかなり宗教に影響されていますよね。
プロテスタントの牧師の子として生れたニーチェはそれを否定した人で、「信仰を持てば死んだら天国へ行ける」、「生まれ変わればまた新たな人生を生きることが出来る」など、宗教的思想の助けにより今の生から目を逸らすのは意味がない、と考えました。

ニーチェが更に考えたのは、人生とは、たとえ死んで生まれ変わったとしても1分1秒まったく同じことを繰り返す「永劫回帰」の世界。それを悲劇と考えるのではなく、受け入れ、この苛酷な人生が何度同じ様に廻ってきても、よし!もう一度!と思える生き方をしろと言うのです。

セロイに出逢うまでニヒリズムに満たされていたイソは、

「弱者のルサンチマン」と言う価値のない生き方ではなく、

(ルサンチマンとは、『弱肉強食』の世で押さえつけられた弱者が強者に対し「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を持つこと。
これにより弱者は強者を悪と見なし、復讐心を抱くが、弱者は実際、強者を相手に行動に移せないため、復讐できない無力や諦めを「善」や「美徳」とすり替え弱者主体の現代では道徳的思考と考えられる。
これはチャン・デヒ会長が最も卑しいと見下し軽蔑する弱者の抵抗方法でありながら、どうせ家畜同等の低俗民はそうであろうと決めつけ、自らもそれを利用して屈服させている。こう言う人がまさに自分が「超人」であると勘違いしている場合があるが、実際にニーチェが「超人」と考える人とはまったく違う。)

目の前の困難に毅然と立ち向かい本来の意の「超人」

(ニーチェが「永劫回帰」の世を生き抜く手段として考えた、苛酷な状況に堪える力を蓄え、支配するもの(古い価値観)に否!と言う自由な精神を持ち、力強く創造的に楽に生きる人)

(以上、ニーチェに関する斜文字は全部、わたくし、お先生の解釈なのであしからず。)

的な存在に近づこうとする人物、セロイを目の当たりにして、この人の力になりたいと思い、果ては、愛することを知るようにもなっていきます。

途中ドラマらしいご都合主義な場面もあったけど、このイソの存在が話を大変面白くしていました。

「超人」に近づくセロイは会長に対しどの様に勝つのか?!
「土下座」の価値とは?!

そうやってセロイとイソたちが勝ち取った平和な「日常」を是非ドラマでご確認下さい❗

最後に、このドラマ紹介の動画とハ・ヒョヌが歌う力強いテーマソングをお聴きください❗(映像は若干ネタバレですが、寧ろこれくらい見た方がドラマに興味が湧くと思います🎵)
ちなみにこの曲、ドラマの最後の方で、セロイの店パンバムの従業員、トランスジェンダーであるマ・ヒョニ(私のお気にいりキャラ)が危機に陥った超大事な所でかかるのですが、この曲のタイトルは『石ころ』ですからね❗
是非お忘れなきように😫


[MV] 하현우 - 돌덩이 [이태원 클라쓰 OST Part.3 (ITAEWON CLASS OST Part.3)]

 

一応、前回書いた1ー6話を見た感想も貼っておきますね🎵

 

osenseitoosaitousama.hatenadiary.org

それでは~🎶